開発から2年6ヶ月を経て生まれた、温度や湿度を遠隔からパソコンでカンタンに確認することができるモニタリングシステム「温湿当番」。その紆余玉説の誕生秘話をお聞き下さい。
きっかけは、お客様との雑談でした。
弊社が、現在のオフィスである、岡山リサーチパークインキュベーションセンターに入居する前、
ある方のご好意で、オフィスを間借りさせて頂いていました。
そのオフィスには、様々なお客様がお越しになって、談笑されていきます。
私も、仕事に余裕があるときは、話の輪に混ぜてもらうこともあったのですが、
その席で、岡山で最大規模のワイン屋さんから、雑談ぽく相談されたことがありました。
「店舗から少し離れたところに、ワインセラーを持っています。」
「そこには大量のワインを貯蔵しているのですが、
夏場は、エアコンを作動させても、どうしても温度が上昇して、湿度が低下します。
そうなると、実際のセラー内の温度が、いったいどうなっているのか、
不安で不安でしかたない。」
「どうしても気になるときは、自らワインセラーに赴いて、温度計 湿度計を確認しています。
時間も無駄だし、意外と心労も増えるので、どうにかならないかなあ?」
この話を拝見したのは、2005年の秋ぐらいだったと記憶しています。
お話を拝見して、具体的な解決案を、即答できなかったと記憶しています。
なにしろ、高トラフィックのサーバー設計などは、弊社の得意分野ですが、「遠隔地の温度計 湿度計 計測」となると、ネットワーク対応の温度計 湿度計が必要となります。
ネットワーク対応の温度計・湿度計である必要性ですが、
・外出先や遠隔地から温度の確認ができること
・温度計 湿度計の値が異常値になったら、メールで連絡がほしい
などの要望を満たす必要があったからです。
弊社はネットワーク技術に関してはプロですが、温度計・湿度計については、まったくの素人。
そこで、既存のネットワーク対応型の温度計・湿度計を調べてみました。
いずれの製品も、お客様のオフィスに、データ集計用のサーバー(パソコン)が必要でした。
そのサーバー(パソコン)は、1日中電源を入れておく必要があります。
その他、いろいろと調べ、考えていくうちに・・・・
| 『お客様のオフィスで、温度計 湿度計 専用サーバー(パソコン)を、 設置するのは、電気代を考えただけでも非効率だなあ。』 |
| ↓ |
| 『温度計 湿度計 専用サーバー(パソコン)の設定も、意外と大変だ。 間違って設定したらセキュリティ的にも問題になる。』 |
| ↓ |
| 『だったら、弊社で運用をASPサービスとして、代行することはできないだろうか?』 |
| ↓ |
| 『ネットワーク対応の温度計・湿度計を、自社開発すれば、お客様の声も反映しやすいはずだ!!』 |
| ↓ |
| 『お客様がほしい商品だから、ほかのお客様も、実は困っているはず!!』 |
と、半分冗談のような、意思決定により、ワイン屋さんに、温度計 湿度計 「温湿当番」をご提案することになりました。
早速、ワイン屋さんにお話すると、
「同業他社にも、同じような悩みはあるはずだから、みんなに喜ばれるサービスだと思います。
是非形にして、弊社でも使わせて!!」
と、うれしいお言葉を頂き、具体的な製品化に向けた調査に入りました。
2005年の冬。製品開発に入る前に、簡単に市場調査をしました。
私が調べた限りでは、温度・湿度計測のASPサービスは存在しませんでした。
いずれの製品も、お客様のオフィスに、データ集計用のサーバー(パソコン)が必要です。
今思えば、調べ方が、甘かったかもしれません。
ですが、裏を返せば、これだけ表に出てこないということは、
・商品性・需要がない。
・まだ製品が存在しないだけで、需要はある。
この2パターンしかないと考えました。
そこで、
・まだ製品が存在しないだけで、需要はある。
の考えに賭けてみることにしました。
高精度の温度センサーを探して
ネットワーク対応の温度計 湿度計をこれから作成するにあたって、一番重要な部分があります。
それは、高精度の温度 湿度センサーです。
またワインセラーに導入することもあって、湿度も重要な要素となりました。
湿度計も重要です。
まとめると、
・温度・湿度が計測できる、温度計センサー・湿度計センサー
・キャリブレーション作業(製品ごとの微調整)が不要な安定したセンサー
となりました。
これらを実現するセンサー探しに、数ヶ月を要しました。
ハードウエア系の本や、インターネット、問屋さんなど、かたっぱしから調査した結果、
高精度でキャリブレーション不要の、すばらしいセンサーが見つかり、採用することにしました。
プロトタイプの歴史
もう2006年正月。急いで、複数のプロトタイプの製作に入りました。
頭で考えるよりも、結果が判明するのが早いからです。
以下、お恥ずかしいのですが、失敗の歴史の一部です。
・プロトタイプ1号
形式: ミニパソコンに、温度計センサー・湿度計センサーをUSB機器として接続して計測する
結果: 起動が遅い → 起動するために、30秒以上必要
発熱問題 → ファンレスのタイプとはいえ、多少熱を持つ
消費電力 → ミニパソコンとはいえ、電池駆動できるほど、省電力ではない
結論: ソフトウエア屋の発想だと、ハードウエア製作には
よくないことがわかりました。
・プロトタイプ2号
形式: 温度・湿度センサー専用のネットワーク機器を専用設計する
結果: 起動が早い → 10秒以内に起動します。
発熱なし → 熱はほとんど持たない。
消費電力 → 数時間なら、電池駆動可能
家電のような取り扱い → いきなり電源を切っても大丈夫
結論: 専用設計のほうが、今回の目的にフィットしていることが判明しました。
これ以外にも、設計・製作しましたが、過去の失敗ですので、この程度でご容赦を。
ハードウエア設計・製作
弊社は、ソフトウエア会社ですが、簡単なハードでしたら、設計・製作もできます。
ファーストモデルは、ハードウエアも自社で設計・製作することにしました。
電子基板の作成は、ブルガリヤで有名な会社さんにオーダーして、製作してもらいました。
電子メールと、FAXでのやりとりを繰り返して、約1ヵ月後。ようやく電子基板が到着しました。
事前に購入しておいた、温度センサー・湿度センサー、各種電気部品をはんだづけしていくと、
とある部品の配置が、左右逆になっていたことが判明。単純ミスです。
その部品は、結構大きな部品で、簡単にブリッジ配線することは不可能でした。
この結果、1ヶ月作業が延びることになりました。
この空いてしまった1ヶ月で、
センサー側に組み込む予定だった、ソフトウエアの開発をすることができたので、
スケジュール的には問題ない形となりました。
転んでも、タダでは起きません!
プロトタイプ試験
ハードウエア・ソフトウエア・ASPソフトウエア、すべてがそろった結果、プロトタイプ機が完成しました。
先を急ぐので、急ピッチで、各種試験を実施。例によって、原因不明の難問に遭遇しました。
『6時間に1回、必ずデータが欠損する(データが収集されない)』
非常に悩みました。ハードウエア側の不具合とは考えづらいので、ソフトウエア側の問題です。
ソフトウエアのアルゴリズムや、ハードウエアの問題、考え抜きました.が、原因は解らず。
八方ふさがりな状態を打破するため、
詳細な動作記録を作成するようにソフトウエアを改版し、再度試験することにしました。
数日に渡った試験結果を解析すると、意外なことが判りました。
このプロトタイプは、温度湿度のデータ収集周期(分解能度)を、60秒としていました。
かなり精度が高いとはいえ、ハードウエア内の時計も少しずつ誤差が溜まっていきます。
すると、60秒が、61秒程度になることがあり、その周期が、たまたま6時間だったようです。
6時間経つと、61秒間隔に一度だけ、温度を収集します。
すると60秒間計測されない時間が発生したため、6時間に1回、必ずデータが欠損することになっていました。
なんとも、判りにくい不具合。
ですが、原因が判れば、対策は簡単です。
温度計・湿度計のデータ収集周期(分解能度)の、2/3のタイミングで収集することで、
無事回避することができました。
検証するにも、必ず6時間かかったので、この件は、長丁場の不具合対策となりましが、
非常にいい経験となりました。
フィールドワーク
試験結果も良好だったので、最初のモデルをワイン屋さんにお持ちして、
フィールドワークさせて頂くことにしました。
設置作業は、5分もかかりませんでした。
事前にIPアドレスがわかれば、LANケーブルを挿して、電源を入れるだけです。オフィスにサーバも不要。
数分後には、ブラウザで、無事に、温度計センサー・湿度計センサーの状態がわかりました。
フィールドワークも良好でした。
初期モデルには、ハードケースがありませんでした。
ですが、動作上は、まったく問題はありませんでした。
ケースがない方が、熱対策をする必要がなく、帰ってよかったぐらいでした。
実績として、1.5年以上安定動作しています。
ですが、ホコリや予期せぬ湿気などで、故障の原因にもなります。
考慮するべきポイントだと考えていました。
また、ハードウエアに関しては、
セカンドモデルからは、専門の方にお任せするのがいいだろうとも感じていました。
今以上に、広い皆様方に使っていただくことを考えると、
高品質の製品づくりが、必須であると考えたからです。
きっかけはインターネット
ファーストモデルをASPサービスとして提供開始から1年以上経過した、2007年夏。
弊社のサイトをご覧になった方から、組み込みソフトウエア開発の打診がありました。
お話を拝見すると、お相手は、ハードウエアのプロ。
当初は、その組み込みソフトウエア開発の案件で、数週間させて頂いたのですが、
納期的に難しいことが判明したため、その件はお断りすることにしました。
例によって無駄話をしていると、「温湿当番」の話になりました。
私が、初期モデルをみせると
「もしよろしければ、うちで再開発させてもらえませんか?」
とのご提案が。
こちらにとっても、希望していたことなので、早速具体的な検討に入りました。
開発目標
初期モデルで問題になっていたことをクリアするべく、開発目標を掲げました。
ハードウエア開発目標
・ハードケースをつける
・停電時でも、6時間は動作可能に
ASPサービス開発目標
・インターフェイスの最適化
・ページデザインの向上
・ASPサーバーの収容台数の向上
開発体制
有限会社クラフト
・全体統括
・ソフトウエア設計・開発・保守
・販売
・APSサーバーサービス設計・開発・運用
電導株式会社様
・ハードウエア設計・製造・開発・保守
という、初期モデルでは考えられない、ジョイントベンチャーのスタイルとなりました。
この続きは、また後日にでもご紹介できればと思います。










